君がいる風景
第5章 夕飯
「俺んちまでの道覚えただろ?
迷子になったりすんなよ。
翔ちゃんもあの坂道のぼると足腰鍛えられるぜ」
「ほんとだね。
じゃああのお店でから揚げ買って遊びに来るね」
冷たい風が吹いてきたから室内に入ることにした。
階段を先に降りてく翔ちゃんから
ほんのりあまくていい香りが漂ってきた。
めばるの煮付けにビール、
貰ったコロッケに千切りのキャベツを添える。
蒸した芋は皮付きのままで皿に盛って。
白飯は買い置きしてあるパックの飯をレンジでチンした。
こたつのある部屋に運んで
2人でかるく乾杯してから箸を手にする。
久しぶりにゆっくり誰かと向かいあって食う夕飯
よく笑って表情がころころと豊かにかわる翔ちゃんは、めばるの煮付けを美味い美味いって何度も
声高に言ってくれた。
俺が自分で釣り上げたって言うとでっかい瞳を
更にまん丸にしながら驚いてくれる。
「智くんってホントになんでもできるんだね。
スーパーマンみたい」
「なぁんも出来ねぇよ。
ってか、やりたい事しか続かねぇから彼女が
出来てもすぐに愛想つかれちまう」
「じゃあ今は、彼女とかいないの?」
興味津々って顔して身を乗り出しながら訊ねてくる翔ちゃんがいる。