テキストサイズ

君がいる風景

第6章 自覚



手を合わせてここ最近のことを振り返ってみた。

何気なく過ぎてた日常
あの日カギを落っことして慌てた日

お供えモノのようにここに置いててくれた。

見知らぬ気の良い人に会ってみたいと思って
祈ってたら、拾ってくれた相手とは巡り会うことはできなかったけど

店のアルバイトの面接にやって来た翔ちゃんと
出逢えた。


あのきれいな笑顔に見惚れてスケッチブックにこっそり似顔絵を描いてたこと。

なかなか縮まらないもどかしい距離感

更に祈り続けると、
歓迎会でぐっと距離感は縮まって今では
毎日メールや電話でのやりとりをする仲にまで
なれてきている。

…智くん

耳触りのいいやわらかな声の響きで呼ばれる。

マジでありがたくって
ここの祠の神様には感謝の気持ちでいっぱいだ。



確かカギを拾ってくれた人も
このココアを買って置いてくれてその下に
手紙を添えててくれてたんだっけ。

ポケットから取り出した財布
たたんでいれてあるあの手紙を取り出すと
かすかに香る甘い香り

首に巻いてるマフラーと同じ匂いのように
思えてきた。


それが都合にいい勘違いなのか、運命だったのか
が分かったのはもうすこし先の話。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ