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君がいる風景

第7章 嵐の夜に



朝からどんよりした曇天の空模様で
店に来るときから雨が降り出してきそうだった。

午後からバイトに来た翔ちゃんは、
すこし雨に濡れてて昼間に見た天気予報だと
今夜は大荒れになるとも言っていた。

客足もあんまり伸びてこねぇし、ホールの奴等も
いつもより丁寧な拭き掃除とかしている。


相葉ちゃんに話しかけられてり翔ちゃんは
微笑みながら手の動きは止めずに相手をしていた。




「あの、気になってたんだけど
これって飾ってあるだけなの?」

「えっと、なんかね、オーナーがさ
娘さんが外国に嫁いで居なくなって自宅には
もういらないって店に持って来たらしいよ。
もったいないよね、せっかくのピアノなのに」

「あ、それですけど、
前にオーナーが誰か弾いてくれればって言ってましたよ。
楽器は触れて音鳴らしてあげなきゃいけないって」


片付けをしてるとそんな会話が聞こえてきてた。

洗い物をしてる最中に
ホールから聴こえてくる鍵盤を弾く音。


「えっうそぉ、もしかして翔ちゃんって
ピアノ弾ける人なの?!」

「えっとそんなに上手くないけど
多少ね、昔習ってた事もあったし。」



チーフに了承を貰った翔ちゃんがピアノの前に
座って演奏をはじめるらしい。

しばらくしてから
ディズニーのよく聴くメロディーラインで
ピアノのやさしい旋律で聴こえてきた。



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