君がいる風景
第7章 嵐の夜に
星に願いを
誰もがその音色に聴き入って魅入られていた。
演奏が終わった瞬間、客も店員も全員が拍手を
していた。
大雨の日のささやかなリサイタル
「図々しく演奏してすみませんっ 」
恐縮して頭を下げる翔ちゃんがたまらなく可愛く
思えた。
「すっげーすっげえ、翔ちゃんやるじゃん!」
相葉ちゃんのハイテンション気味な声が店内に響いてた。
最後の客が帰ると店をはやめに閉めることになり
ゴミ捨てに外へ出ると叩きつけるような雨風に
なってきてる。
翔ちゃんと2人、並んで傘を差して足早に駅まで
向かう頃には遠くから雷の音まで聞こえてはじめてた。
「…うそぉ……」
「どした?翔ちゃん?」
「……雷……鳴って、る?」
「みたいだな、まだ遠くみたいだな
おいっ大丈夫かよ?翔ちゃん?」
顔色が真っ青を通り過ぎて色を失って白くなってきてる。
ピアノを弾いてときとはまるで違うひどく
怯えたかのような表情。
電車に乗って座席に座ってもうつむいたまま
固まってしまってる。
膝の上の握りしめた拳が小刻みに震えていた。
「翔ちゃん…具合悪いのか?」
「…え……ぁ、大丈夫」
下車してホームの階段を上っていくときには
本格的に雷が鳴りはじめてた。