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君がいる風景

第1章 落とし物


手先の器用なかずは自転車の組み立てに
パンク修理、ブレーキ、タイヤ交換なんでも
ひと通りこなせるくせに
自転車にはまったく興味がないらしく
この春から大学に通いだしたらしい。


「なら、俺も店、手伝ってやるよ
じいちゃんの顔も見たいし」

「まあ、客なんて来ないと思いますけど
智兄の顔みたらじいちゃんも喜ぶと思うから」




年季の入ったストーブに火をつけてくれる
灯油の匂いに油の染みた床






俺は今日の自転車の鍵の出来事をかずに話してみた。



「へぇ、拾ったカギを祠にお供え物に。
ずいぶん粋な事をする人間もいるんですね、」

「だろ?!
これがさぁ、かわいい女子とかなら奇跡の出会いってか、運命感じるよな??」

「いや、若くて可愛い女子が祠にお参りしたり、 お供えなんてしませんって!!
どうせ近所の気のいい暇なお年寄りがしたんでしょ。」



至極当然な物言い

確かにかずの言う通りだと思う。

けど、そこに置いててくれておかげで俺が目に
したし、気づけた事がマジでありがたくて
せめて感謝の気持ちくらい伝えたいなって
さっきも自転車をこぎながら考えてたんだ。



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