君がいる風景
第1章 落とし物
様々な自転車が所狭しと並んでる店先
古びたポスターに黄ばんでしまった表彰状
過去のじいちゃんの栄光が色褪せながらも壁一面に
たくさん飾られてある店。
ガタつく丸椅子がなんとも哀愁を感じさせるけど
俺はこの空間が大好きで中学生の時には
押しかけバイトまでさせてもらっていた。
薄ぼんやりの蛍光灯の光りが店先を照らしてる
「うぃーす、じいちゃーんこんばんはっ」
「あ、智兄っいらっしゃい久しぶり!」
「お、ようっおめえかよ、かず。じいちゃんは?」
「今病院行ってんです、昼間にちょっとふらついた
みたいで」
「マジかよ?」
「ええ、たいしたことはないって本人もいってたんだけど。」
「なら、店閉めりゃいいじゃん」
「俺もそう言ったんだけど
仕事帰りに自転車の調子が悪くなることが
多いからって出来る限りのことはやってくれって
ホントいい迷惑っ」
二宮自転車屋のじいちゃんの息子は
つまり、
このかずの父親はサラリーマンでこの店の後継ぎにはならなくて、孫のかずに至ってもその気は皆無。
いずれじいちゃんが引退するとこの店は閉店する ことになり、町内から自転車屋がなくなっちまうんだ。