君がいる風景
第11章 高鳴り
トックン
トックン
トックン
智くんのゆっくりな鼓動が鼓膜に直接響いてきた。
ずっと逢いたいって願ってた人
智くんは職場の同僚で俺よりも歳上の男の人
布団は1組しかないから。
酔って意識がなくてこれは不可抗力だから
単に抱き枕がわりに抱っこされてるだけ
落ち着け俺の心臓っ!!
そっと両手に力を込めて抱き返してみると
身じろぎながら俺の髪の毛を優しく撫でてくれる。
その仕草に涙がなぜだか溢れそうになった。
違う誰かと勘違いしてるだけ
智くんの夢の中で意中の人の身代わりなんだ
そう言い聞かせながら
でも、
切なくて、でもこのぬくもりが嬉しいくて
ずっとこのまま腕の中で微睡んでいたかった。
時間は容赦なく過ぎてく
壁の時計に目をやるとそろそろ大学に行く
準備をしなきゃいけない時間
きっともう2度とこんな機会はないから
まだ離れたくないって自分勝手な想いに駆られて
しまいそうになった。