昭和回想録
第4章 二人の少女。
俺の部屋は二階にある。
部屋に行くためには屋外階段を使う。
ボロアパートにお似合いの古くて赤く錆びた階段だ。
いつもなら軽快に二段あかしでかけあがる。
最上段まで行くのに、ものの数秒もかからないだろう。
だが今はちがう。
美幸が俺の視界に入った瞬間から脚の動きが止まってしまったのだ。
階段を上がる音に気がついて美幸は振り向いた。
そして俺を見つけると
「お兄さん・・・。」
まるで長い間会えなかった恋人との再会を喜んでいるような表情だ。
言葉を発すると同時に美幸は立ち上がった。
「来ちゃった・・・。」
美幸の声は弾んでいたが、俺の困惑の表情に何かを感じた。
「迷惑だったですか?・・・・・えッ?!」
美幸は絶句した。
そう。
俺の後ろにいた優子を見つけてしまったのだ。