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第21章 かこのこ
ちょっと離れたところにいたからかな。
ちょっと気配消してたからかな。
うん、しょうがないしょうがない。
俺もいるよ、と2、3歩近づくと、
あ、にのちゃん!といつもの笑顔を見せてくれる。
ほら、いつも通りだ。
なにもおかしくない。
そのはずなのに、
さっきから胸がザワザワと落ち着かないのは
なんでだろう。
まーくんがその子に話しかける口調とか
まーくんに向けるその子の眼差しとか
2人の空気感とかが、俺のそれとはまるで違うことに
胸騒ぎを覚える。
A「…にのちゃん?」
急に名前を呼ばれたことで、
ビクッと大袈裟に反応してしまった。
A「顔色悪くない?気分悪い?人に酔っちゃった? 」
心配そうに俺の顔を覗きこむまーくん。
あれ、俺いまどんな顔してんだろ。
大丈夫、て伝えなきゃ、そう思うんだけど
うまく言葉が口から出てこない。
N「あ、ごめ…、 」
三「にのーーーーー♡!!!」
やっとの思いで発した言葉はかき消され、
後ろから走って抱きついてきたきたけんちゃんに
頭ごとくしゃくしゃにされた。
A「だぁぁ!健先輩! 」
離そうとするまーくんと
離そうとしないけんちゃんに
もみくちゃにされている俺。笑う風間。
それを涼さんがキョトンとして見てる。
涼「雅紀の友達?」
俺のことを訪ねてるのだろうが、
目線はまーくんに向いたままだ。
A「あ、うん。…同じクラスのにのちゃん。」
"友達?" "うん、同じクラスの"
この部分だけが頭の中にぐわん、と木霊して残る。
涼「そっか。雅紀と風間の幼馴染で
山田涼っていいます。よろしく、ね?」
整った綺麗な顔だが、ニコっと笑うと、
急に幼い印象になる。
不覚にもドキッとしてしまった。
N「あ、二宮です…。よろしく。」
そこで会話が途切れてしまうと、涼さんが
そろそろ行くね、と杖をつき直した。
去り際に一瞬、まーくんと目を合わせて、
2人が微笑みあった顔に、
胸騒ぎは更に増幅させられた。