more & more
第21章 かこのこ
シン、と静まった体育館の中
キュッというバッシュの音。
柔らかいシュートフォームから放たれたボールは
弧を描きゴールリングに吸い込まれた。
その瞬間、ワァッと大歓声に包まれるギャラリー
シュートを決めたまーくんと、駆け寄った潤くんが
笑顔でハイタッチしてまた同じ方向へ走り出した。
決勝戦、特に後半に入ってからは
まーくんのシュートが面白いように決まった。
リードを奪って余裕があるからか、
他のチームメイトの動きも心なしか
伸び伸びしているように見える。
途中交代でコートに立った潤くんも、
さっきからずっと笑顔だ。
N「…なぁ。相葉くんて、
ほんとにすごい選手なんだな。」
素人目に見ても動きが全然違うのがわかる。
一年生なのに、先輩に当たり負けせずに
ガツガツボールを奪いに行くところとか
カットの素早さとか。あんな細いに
どこからそんな力でてくるんだ。
K「中3の全中の時は
全国からスカウトがきたって話だからなぁ」
N「…なんか別の世界の人みたい。」
K「バスケのときだけはな(笑)」
ははは、と笑う風間の隣で
俺だけは複雑な思いでいた。
"雅紀が好き"
なんだって今日あったばかりの俺にそんな話。
そこでまーくんは俺のものだ!って
強く言えないこの関係にも嫌気がさす。
俺なんかが、まーくんと付き合ってていいのか?
この会場でまーくんに
キャーキャー黄色い声援を送る女子たちが、
実はまーくんは男と付き合ってるなんて知ったら
どう思うんだろうか?
まーくんのお母さんだって
びっくりしちゃうんじゃないか?
悲しむんじゃないか?
潤くんや翔くんが近くにいるから忘れてたけど
ほんとは俺たちって
すごく脆い関係なんじゃないか?