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第25章 ひとひら





#A






A "・・・俺、急いでんだけど。"



涼 "ごめん、"




電車に乗る直前、

掛かってきた電話は涼からだった。

出るかどうか迷ったけど、

この前のにのちゃんの話が頭をよぎり、

やっぱり俺がはっきりさせないと、と思い直し

一本電車を見送ることにして電話に出た。




涼 "時間はとらせないから。
少しでいいから会えない?
会って、話したいことがあるの。"



A "ごめん、人待たせてんだ。"



涼 "・・・彼女?"



A "…まぁそんなところかな。"



涼 "…そっか。"



それっきり黙った涼。




俺らの間に流れる空気とは裏腹に、

駅には軽快なクリスマスソングがかかっている。






もう切るぞ、といおうとしたところで

左耳との時間差で、

携帯をあててる右耳にクリスマスソングが流れる



・・・あれ?







A "・・・お前今どこいんの?"



涼 "…え?・・・あ!後ろ後ろ!"




後ろを振り返ると、

改札の向こうで大きく手を振る涼。



A「あ・・・。 」



涼は、すぐに改札をくぐり

俺のところへ駆けてきた。




涼「・・・彼女とは実家で会うの?」



A「ん、まぁ・・・。 」



正直に答えてしまってからやべっ、と

思ったがもう遅い。



涼「・・・じゃあ雅紀んちまででいい。
少しだけ、ほんと少しだけでいいから話そ?」



どうせ帰り道一緒なんだからいいでしょ?と

笑い泣きのような顔で懇願されたところに、

次の電車がガタンガタンと音を立てやってきた。




A「・・・わかったよ。」



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