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第28章 あけおめ





#N



三ヶ日が開け、学校も始まり。

寮で暮らす俺の日常が戻ってきた。




変わったことといえば、

あれ以来すっかりミュージカルの魅力に

取り憑かれ、暇さえあればミュージカル動画を

観るようになった。




そして、宣言通り両親が渡米した。



思っていた以上に急ピッチで

引越しの作業を進めていった母さんたち。



見送られると寂しくなるから、と

俺が学校に行ってる平日に

渡米することになった。



"なんか会ったらすぐ連絡しなさい!
周りのお友達とも仲良くするのよ!"




超大真面目でそんなこと言うもんだから

軽口を叩くつもりが、気圧されてしまって

うんわかった、と素直に言葉が出てきた。




今までもそんな頻繁に会ってなかったけど

これからはより簡単に会えなくなるんだ。



そう思うと、

どこか心細いところは正直あって。



やっぱり俺はまだまだ子供なんだなーって

実感した。














A「かーずくん」


N「ん?」




昼休みの教室。窓際で真っ青な空を眺めていると、

俺の心の中を読み取ったかのような

優しいまーくんの笑顔がすぐそばにあった。




A「お母さんたち、もう着いたかな?」



N「…さぁね。」




A「母ちゃんがさ、かずくんのためなら
いつでもご飯作るから
また食べにおいでって言ってた。」



N「…ふふ、ありがと。」




親子揃って、俺に甘いんだから。





A「でさ、かずくん、」




微笑んだまーくんの顔が、そのまま近づいてくる。










どんどん。近づいてきて…

まるでキスする前のようにその瞳に吸い込まれ…








ちょ、え…

待ってここ教室…///





まもなくゼロ距離!というところで反射的に

ギュッと目を閉じると、




パチン!



目の前で鳴った音にビックリして

またすぐに目を開けた。





すると、さっきまですぐそこにあった

まーくんのくりくりお目目は

つむじに変わっていて。

今は手を合わせたまーくんが

深々と頭を下げている。



A「かずくんごめんなさい!!
どーーしても英語だけ課題が
終わらなかったの!今晩見せてください!
このとおりですぅ!! 」











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