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第31章 がらがら
M「お前、山田からにのを引き離す時、
にのがなんて言ったかわかるか?」
A「・・・。 」
M「"これ以上まーくんを悲しませないで"って、
泣きながら山田に懇願してたんだよ。 」
A「・・・っ、 」
M「お前が酷い言葉で、酷い嘘で突き放しても、
あいつはお前の言ったことを信じてるし、
お前が幸せならと受け止めたんだ。
なのにお前のこのずさんな状況は何だよ?
すぐバレるような嘘はつくは、
別れを切り出したのは自分のくせに
いつまでもニノのこと目で追っかけて。
おまけに最近部活でも気が入ってねぇっつーか
下らないミスばっかしやがって!」
一方的にまくしたてる俺の前で、
下唇を噛み締めて俯く雅紀。
M「・・・そもそもなんでお前にのに
別れるなんて言ったんだよ。」
A「・・・・・・にのちゃんのため?」
M「なんで疑問系なんだよ。」
A「・・・にのちゃんのため、って言い訳して、
ほんとは自分が怖かった、だけなんだと思う…」
M「・・・。 」
A「にのちゃんは、頭が良くて、要領が良くて、
俺にはないもの沢山持ってる。だから
留学断る、て言われたときに
俺がにのちゃんの選択肢の基準になってる、
にのちゃんの未来を左右してる、
ってことが怖くなったんだ・・・ 」
M「・・・そのまま伝えればいいのに。」
A「うん…まぁそう。でもじゃあ俺に言われたから行く、っていうのもちがうと思ったんだよ。」
M「まぁ、お前の言い分もわかったけどね。
もう、今後会うこともないと思うから、って
泣き笑いみたいな顔してたよ、最後は。」
A「最後って………」
M「アメリカ、行くんだって。にの。」
"アメリカ"という単語を聞いて、
泣き出しそうだった雅紀の目に、
一瞬、希望の光が宿った。
A「留学の話、受けたんだ…良かった…。
…9月から1年でしょ?
…今後なんて、大袈裟だな、でも良かった…」
ひとりごちながら安堵の表情を浮かべる雅紀。
でもちがうんだよ・・・。
M「にのがするのは留学じゃない。
編入だ。もう日本には帰ってこないよ。」
雅紀の目が、一瞬見開かれて、
そのままどこか視点が定まらなくなり、
ふるふるとかぶりを振った。