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第31章 がらがら
*N
両親もアメリカにいるし、
まーくんがいなかったら
もうここにいる意味もないかも
そんな風に思ったきっかけは、
やっぱりあの留学の話だった。
ここにいる意味もないなんて大袈裟かな。
ただ単に、まーくんに嫌われてるってわかりながら
同じ教室、同じ寮にいるのが怖かったんだ。
あんなに好きだった人なのに、
教室で聞こえる特徴的な笑い声も
自分に向けられていないと思うだけで辛い。
他の人に向けられる笑顔を見ることができない。
春休みになって、
随分と自分が楽になったことがわかった。
それは、まーくんを感じることがないから。
O「コーラのむ?」
N「ありがとう。 」
駅前で涼さんたちに失態を見せた後、
潤くんに引きずられるように帰ってきた寮。
部屋に入ってもひとりじゃどうにも辛くて、
おーちゃんに泣きついた。
美術室で絵を描いてて、
これから帰るところだったっていうから
寮を抜け出して
おーちゃんちに泊めてもらうことにした。
初めて入るおーちゃんの家。
玄関入ってすぐの壁には
コンクールの賞状やトロフィーが
所狭しと額に入って飾られてあって。
いらっしゃいと出迎えてくれたお母さんは
おーちゃんそっくり。
2階のおーちゃんの部屋は
絵を描く為の部屋って感じで
勉強机とベッドと、窓際に立てかけられたイーゼルと
余分なものは一切ない。
O「・・・なんか電話の時よりか
落ち着いてきたみたいだな。」
N「おーちゃんみたら落ち着いた。 」
O「そりゃ良かった。」
余計な詮索はしない。
おーちゃんのそういう空気感がすごく安心する。
まーくんが太陽なら、この人は月だ。
静かにそこにあって、心が凪いでいくような月。
N「おーちゃん、俺、アメリカに行くことにした。 」
O「お、留学、することにしたんか。」
N「留学じゃなく、編入することにした。
俺、転校するよ。しばらくは
日本に帰ってこないと思う。 」
おーちゃんは一瞬驚いたような顔をした後
困ったように眉毛を下げて微笑んだ。
O「・・・相葉ちゃんには黙っていくんか?」