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第33章 時雨心地
マ「はい、出来上がり♡」
マリウスが覆っていた布を外す頃には、
俺の髪はガチガチにセットされていた。
ついでに言えば肌にもなんか塗られて
顔がつっぱるような変な感覚だ。
N「うぇ〜なにこれ・・・ 」
なんか肌が窒息死しそうなくらいなんだけど・・・
マ「舞台メイクだからね、あんま触らないでよ?」
N「舞台メイク??? 」
ちょんちょんと指先で俺の毛先をいじるマリウスに
問いかければ、逆にマリウスがキョトンとした顔で
マ「え?今晩の舞台出るんでしょ??」
と嘘みたいな爆弾発言をしてきた。
N「はぁあああ?!!! 」
ばっとジャニーさんの方を見れば
コーヒー片手にクッキーまで口に運んでいて。
N「ど、!どういうことですか!!!」
J「You、ミュージカル好きでしょ?出ちゃいなよ。」
N「いや、いやいやいやいやいやいやいやいや!!」
無理だろ!!
ひどくあっけらかんと言い放たれた言葉に全力で
否定するが、コーヒーを流し込んで立ち上がった
ジャニーさんは、そんな俺を気にも止めず
稽古場の方へと歩いて行った。
マリウスに君もいきな!と背中を押され、
仕方なく小走りで後に続けば、
ジャニーさんが開けた稽古場の奥から、
歌声が響き渡った。
力強く、野太い節のあとに甘く繊細な語りかけるような声
マサ・サカモトのソロパートだった。
パチパチパチとゆっくり手を叩くジャニーさんに気づき、
稽古中の劇団員さんが各々にジャニーさんに
挨拶の声を発する。
その劇団員に向かって、俺を指さし、
J「今日のスタート、この子で行くから。
マサ、よろしく頼むよ」
と声をかけた。