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第33章 時雨心地
マサ「違う、この音だ」
ポーン、とピアノの鍵盤を鳴らし
マサさんが音程を指示する。
N「♪アーーーーー・・・・」
なぜこんなことになっている、
とは言いだせないくらいすんなりと
マサさんの熱血レッスンがスタートし、
早1時間。
マサ「うん、音程はいい感じ。呑み込み早いな。」
いったん休憩しよう、と声をかけられ
思わず詰めていた息が漏れ脱力した。
マサ「英語歌詞なのによく覚えてたな?」
ほれ、と差し出されたペットボトルを
いただきますと受け取って喉に流し込む。
水、うめぇ。
N「・・・初めて見たミュージカルで、
すごく好きなシーンだったので」
マサさんから習ってたのは、
お正月にオカダさんが歌ってたあの歌。
冒頭に少年時代の主人公が歌い、
その後自分の居場所を求めて葛藤しながら
成長していくというストーリーだった。
今回俺が演じるのは、まさしく
オカダさんが演じた少年時代の主人公。
スポットライトで静かに照らされるなか
ひとりで歌い上げたオカダさんのシーンが
今も頭に残っている。