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第35章 雨露霜雪
すっかり暗くなった寒空を見上げながら、
クリスマス本番を待ち望む街を通り抜ける。
ほぅっと口から漏れる息は白く浮かび上がり消えていく。
ふ、と思い出すのは
この時期に生まれたとは思えないくらい
眩しい、太陽のようなあの笑顔。
日本はもう24日だ。
まーくんも18歳か。
元気かな。
彼女できたのかな。
進路決まったかな。
・・・・会いたいな。
フラれたくせに未練がましくそんなことを思っていると、
ポケットの中で携帯が震えた。
おおかた、帰りが遅いと心配した母さんだろうと
携帯を取り出すと、
ディスプレイに表示されたのはまさかの名前。
N「嘘でしょ・・・?」
出るのを躊躇っていると、
パタリと振動をやめたスマホ。
え、え、まって!
不在着信になってしまったその通知を
急いでタップしてかけなおせば、
しばらくの呼び出し音の後、
忘れもしなかったあの声が、耳に響いた。
『・・もしもし』
そっちからかけてきたくせに
それだけ言って黙るなんてずるい。
バクバク音を立てる心臓がうるさくてしょうがない。
N「…久しぶり、まーくん。」