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第35章 雨露霜雪



#A



今しか電話するタイミングないよな、とか

大会前にちゃんと報告しなきゃ、とか

いやいやそれ以前に出るかな・・・・・とか




さっきから部屋の中をぐるぐるしてみたり、

頭を抱えてみたり、

ベットに横になったり・・・





今日はウィンターカップの初戦。

高校最後の大会とあって、珍しく早起きしてしまった。

いや、大会に緊張してたのもそうなんだけど、

おれの中で一つの決意表明みたいな。

にのちゃんに報告しなきゃいけないことがあって。



どうしてもウィンターカップが始まる前に、

それを伝えておかなきゃいけない気がしてた。



だから時差とか調べて、

今日!このタイミングで!と意気込んだのはいいものの



いいものの・・・、

おーちゃんの話を聞いて勝手にそう思ってただけで、

実際にはにのちゃんからしたら

は?今さら何?なんて思われるかもしれないし・・・




あーーわーーあーーー、どうしよう・・・






あーでもない、こーでもないと電話を握りしめていると、

A「ん・・・?」

手の中のスマホからはすでにコール音が聞こえる。






A「どわーーーー!まって!!無理!!」





どうやらディスプレイにニノちゃんを表示したまま

スマホ握った拍子に

発信ボタンを押してしまっていたらしく、

慌てて電話を切った。




だってまだ心の準備が・・・!!





そんな俺の思いを無視するかの如く

ケタタマシイ着信音で震え出したスマホ。



ビクゥ!!!!!とその着信音に驚きつつ

深呼吸をひとつ。




覚悟を決めて、

恐る恐る通話ボタンをタップして耳に当てる。



耳全体が心臓になったかのように、

バクバクなる音がうるさくて、

受話器から聞こえてしまわないかと馬鹿なことを思う。






A「・・・もしもし、 」






掠れる声でそれだけ絞り出すと、

何を喋りたかったかなんて真っ白で。









N『・・・・久しぶり、まーくん』




そう言ったにのちゃんが、

電話越しに少し笑った気がした。



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