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第36章 一陽来復




#N



"会いに行くから"



そういって通話を終えたあの電話から約2週間。

お正月ムードもようやく抜けたころに

彼は本当にアメリカに来た。

ただし。




N「…お前、アメリカの距離感なめんなよ? 」




てっきり会いに行くから、なんていうから

ニューヨークに会いに来てくれると思ったのに。

彼が訪れたのはワシントンD.C.。

電車を乗り継いで、約3時間の道のりだった。




A「えへへ、ごめんごめん・・・」



久しぶりの再会だっていうのに悪態をつく俺に

眉を下げて笑う彼。



N「・・・また身長のびた?」


A「あー、そうかも。5センチくらい?」


N「ふーん・・・ 」



身長もそうだけど、がっしりした気もするし、

会ってない間にますますかっこよくなった気がする。



N「そんで?入試はどうだったの?」


A「ほとんど英語はわかんなかったけど、
試験官の人はニコニコしてたよ? 」


N「大丈夫か、それ(笑)」



まーくんはあのNBAプレイヤーを輩出した

母校の試験を受けることにしたらしい。



無謀だと嘆いた大人たちを尻目に、

やってみなくちゃわからない、と

単身アメリカに渡る決意をしたまーくんは

本当にすごいと思う。



A「にのちゃんまた英語教えてね。」


N「授業の英語と違って、なんかもう感覚だよ。
習うより慣れろ、だ。」


A「えーつめたいーー」



まだトライアルを受けただけで、

受かったわけでもないのに。



それなのにこの人といると

明るい未来が待っている気がするのはなんでだろう。



A「俺、こっちに住むってなったら
にのちゃんの舞台観にいくからね。」


N「そのときは招待するよ。関係者チケット用意する。」


A「うわー、かっけぇ!芸能人だ!」


N「そんな大それたもんじゃないよ。」




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