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1985年空は蒼かった~イノセントスカイ

第68章 本当に卒業したんだよなぁ

波多野を意識し始めた頃
皆で映画を観に行った事
初詣で湯島天神に行って合格祈願した事
そして卒業式

僕は自分の中で中学を卒業できてなかった

もうあの頃には戻れない
後悔の念と様々な感情が入り交じり、僕は校舎に向かって一礼をした

その瞬間、涙が頬を伝った
何故だか解らない…ただもう皆とばか騒ぎしながら校舎を走り回る事は出来ない…

僕は肩を震わせ泣いた

しばらく顔を上げることは出来なかった

「小野っち、どうしたの?」

波多野が僕の泣いてる姿を見て話しかけようとしたが、ただ黙っていた

今まで人に泣いた姿を見せたことは無かった

よく解らないけど、人前で涙を見せるというのはカッコ悪いというか、男らしくない的な考えがあった気がする

卒業式も皆が泣いている傍らでヘラヘラしていた
だから皆より数ヶ月遅い自分なりの卒業式だった

そして僕は自転車を引いて歩いた
波多野はただ僕の後ろに付いていた

しばらく無言で土手の道を歩いた

ふと波多野が僕に声をかけた

「アタシね、小野っちがやっぱり中学に未練があるってのは解ってたんだ…」

僕は波多野の言葉を背に受けて歩いた

「小野っち、中学に戻りたいの?」

戻れるなら戻りたい
でも時は過ぎていき、もう高校生になったんだから、いつまでも中学の頃のままではいられない

「アタシね、小野っちがたまにああいう事するでしょ?やっぱり小野っちは卒業しても小野っちなんだなぁって思ってきて…」

いつの間にか波多野まで涙声になっていた

僕は後ろを振り返り、波多野と同じ歩幅で歩き、土手を後にした

だが、この日の夕方、この澄みきった空の向こうでは、大惨事が起きていた。

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