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1985年空は蒼かった~イノセントスカイ

第69章 空の向こう側では大惨事が…

僕は波多野と土手を出て別れた

僕は夕方にウチに着いた時、テレビでは惨状を映し出していた
日航機墜落事故…
著名人を含む多くの犠牲者を出し、社会全体に大きな衝撃を与えた
群馬県の御巣鷹の尾根に墜落し、生存者は0だという情報も流れた

しかし、翌日には奇跡的に4名の生存が確認でき、一人の少女が救助される場面が全国放送されていた

この場面を観ていた僕は、昼間に見た空を思い出した

蒼天とは春の空を表す季語であるが、僕の見た夏の空は蒼天の様に澄みわたっていた

その蒼天の空の北側では大惨事が起きていた

この事故は後世に語られる墜落事故として今もなお、墜落現場には数多くの遺族の方々等が訪れ、翌年には慰霊碑が建立された

この年はショッキングな出来事が多かった
日航機墜落事故と、その数ヶ月前に起きた、豊田商事刺殺事件

マスコミが豊田商事社長のいるマンションに二人組の男が、カメラの前でこれから社長を殺すと言った後、窓を壊して侵入し、犯行に及んだ

この場面も夕方のニュースで大々的に放送され、犯行を行った二人は社長を殺したとカメラの前でいい放ち、駆けつけた警察に逮捕された

今ではとても考えられない出来事をテレビで映し出していたのだ


話を元に戻し、僕は土手で日焼けして昼寝していた
その夕方には飛行機が墜落するという痛ましい事故がぼんやりと眺めていた空の下で起こった

僕は何故あの時、帰り際に校舎に向かい一礼をしたのか

普段の僕ならそんな事は絶対にやらなかった
むしろ、唾を吐きかける事をしていただろう

あの蒼く一点の曇りの無い空を見上げ、僕もあんな風に汚れの無い澄んだ空を見て、今まで通った校舎に礼を言いたかったのだろう

この日は色々と複雑な心境だった

あんな痛ましい事故は起きてほしくないし、またマスコミもあんな惨事をテレビに映して欲しくない、それだけこの年はショッキングな出来事だった

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