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1985年空は蒼かった~イノセントスカイ

第83章 弟の身を案ずる姉

姉は黙って下を向いていた

「小野っち学校辞めるなんて言わないでよ!祐実センパイは小野っちの事心配なんだから」

「テメーらに関係ねぇ事だろ!大体何でここにテメーが居るんだ?関係ねぇんだからさっさと消えろ!」

僕は波多野を追い返そうとした
すると姉は僕の両手を掴み大声で叫んだ

「何でいつもいつもそうやって危なっかしい事ばっかりしてんの?バカ学校だって何だっていいじゃない?その学校すら辞めて何がしたいっていうの、ねぇ?」

もし僕が尾崎豊ならばアネキの言うことなど一切聞かずに中退しただろう

しかし僕は尾崎豊のように音楽の才能も無いし、これといった身を助けるような武器もない

アネキは手を離さない
その手から涙がこぼれ落ちた

「お願いだからお姉ちゃんの言うこと聞いてよ…アンタがタバコ吸おうが酒飲もうが何も言わない…でも学校だけはちゃんと出て、ねえ?」

「小野っち、祐実センパイはいつも小野っちの事心配してたんだよ…
アタシもこんなお姉ちゃんが欲しかったなぁ。小野っち羨ましいよ…」

…何だよったく!学校を辞めるっていう作戦は失敗したかも

「貴久、お姉ちゃん何も言わないから代わりに学校だけはちゃんと卒業して…」

いつまで手を握ってるんだアネキは
しかも凄い力でずーっと離さない

こりゃ参ったな…

「解った解った、とりあえず学校は続けるからいい加減手を離してくんないかな」

「絶対に約束だからね!」

そう言って顔を上げたアネキの顔は泣き顔でグシャグシャになっていた

「ギャハハハハハ!何だそのマヌケ面は!」

思わず僕が爆笑した

「小野っち、そんな言い方ないでしょ!弟思いのお姉ちゃんをバカにするような事言っちゃダメよ!」

波多野が真剣な顔だ
からかうんじゃないって事か

「それよか腹減った…波多野、あの喫茶店で3人で飯食いに行かないか?」

僕は話題を変えた

「えと、あのお店のハンバーグとかナポリタンは美味しいからそこでご飯食べようかな…
祐実センパイも行きます…?」
アネキは手で涙を拭きながら

「貴久が奢ってくれるなら行ってもいいわよ」

とか細い声で答えた


あぁ~あ、中退計画は失敗だ

この後3人で波多野が手伝いする喫茶店へと向かった

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