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1985年空は蒼かった~イノセントスカイ

第20章 負けたけど得たものは多かった

ただ、1人だけ、僕が泣いてる姿を目撃した同級生がいた、それが波多野だ

肩にバスタオルを掛け、拭いても拭いても流れてくる涙を見て波多野は僕の事をジッと見つめていた…

プールに背を向け、金網越しに見える校舎をただ顔を上げて見ているだけ…

下を向くとまた涙がこぼれそうだから…

「小野っち、惜しかったねぇ、皆、小野っちの事スゴいって誉めてるよ」

波多野の言葉で僕は救われたような気がした…

バタフライは二位に終ったけど、それからはシカトされずに皆と今まで通り話が出来るようになったんだ…

多分、この辺りから僕は波多野を意識し始めた…と思う

このまま卒業までシカト食らってたら僕も康司みたいに途中から学校に行かなくなっただろうね…

今までの事を謝ろうとしたけど、皆はそんな事はどうでもよく、その日だけは僕はクラスのヒーローの様な存在で、大会が終わった後も、色んな連中が僕に声を掛けた…

「小野っち、やっぱスゲー」って…

スゴいのは僕じゃない、今まで散々バカにしてきたヤツラが僕に声援を送ってくれた方が遥かにスゴい…

これを機に、僕はまた今まで通りの付き合いを始めた…

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