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1985年空は蒼かった~イノセントスカイ

第41章 オーディション

はぁ~、おニャン子クラブねぇ…あんな大勢の中にいても、目立つ存在にならないとやっていけないんじゃないのか?
電車の中で波多野が何度も口酸っぱく僕と杉下に言った

「言わないよ~、その代わりアタシ達にはちゃんと結果を教えてよね、ねぇ小野っち?」

「うん、合格しても落ちても教えてくれよ」

波多野は顔を赤らめながら小さく頷いた

やっぱ芸能界ってもんに憧れるのかな、皆は…

僕は芸能界に興味を持ったことは無かった
アイドルに会ってみたいとは思ったが、自分がそういう世界に身を投じるなんて考えた事も無く、自分のルックスが決して良いなんて思った事すら無かった

不細工が何かの間違いで芸能界に入ったとしても、それで飯が食えるなんて到底無理だ

ああいうのは持って生まれたルックスと才能のあるヤツがやるようなもんで、僕のように何も取り柄も無く、外見もパッとしない人間は目指しちゃいけないもんだと思っていたからだ

数日後、波多野から連絡があった
どうやらオーディションに受けて、一次通過はしたものの、二次通過で落選したらしい

まぁ今考えてみても【アイドルを探せ】という番組内のオーディションの内容はケッコーいい加減だったような気がする

出来レースだったとか、そういう噂まであったぐらいだから

「これ絶対に言わないでよ!いい、約束だからね!」

受話器の向こうで波多野が何度も語気を強めて言ってたのは、何だか可笑しくて、僕は笑いを堪えた
(ギャハハハハハ!変な夢見てねぇで、ちゃんと学校へ通ってろよ!)
まぁ、数年後に同窓会でバラされたんだけど、僕に…

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