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1985年空は蒼かった~イノセントスカイ

第46章 自分、無理っす

土曜の夜、僕らは渋谷に繰り出した

この頃の渋谷はサーファーもどきの連中が多く【丘サーファー】と揶揄されていような気がした
というか、サーファーファッションが流行っていた

丘サーファーとは、格好だけサーファーで、実際はサーフィンをしない、見せかけだけのサーファーの事を指していた

そのディスコも入場料を払うとサーフボード形のキーホルダーが貰える

中に入ると、身体中に響く重低音サウンドとミラーボールに圧倒された

一心不乱に踊り続けている人々の中をかき分け僕らは店の奥へと進む

「なぁ、これ話全然出来ねえじゃん、うるさくて!」

僕が大声で横にいる田中に話すが店内に響き渡るサウンドでかき消されてしまう

僕はフリーフードのコーナーでピラフだかチャーハンだかわからない炒め物を食べながら中央のミラーボールの下でひしめき合いながら踊る人々を眺めていた

(こりゃオレには無理だな…)

ディスコは僕の性に合わない、でもその中で、坂井はパフォーマンスの様に踊っていた

ダンスというより、音に合わせて動きを変えてみたり、とにかくその踊りは際立っていた
やっぱスゲーな、あの人!遊びなれてるわ…

上手く表現できないが、1人だけ洗練された動きで人混みの中をユラユラとしながらすり抜ける様に動き踊っていた

あー、こんな人と一緒に踊ったら恥じかくだけだ、と思い僕は遠目から彼の踊りを見ていた

(よく見るとオレと同じ年齢のヤツラが多いな、ほとんどが高校生じゃないか?)

渋谷のディスコはナンパ目的に行く場所でもあり、客も十代が多かった

ディスコで声を掛けられるのを待っている女子高生もかなりいたしね

(何て声描けりゃいいんだ?)

熱気で溢れ、酸欠になりそうな店内の隅っこでただ踊りを眺め、僕のディスコ初体験は終わった
一体何しにディスコに行ったんだろう?

まぁ、社会勉強だと思えばいいのかな…


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