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碧い空に出逢えて ~ 羽ばたく鳥 ~

第1章 澄みきった青空

『北野です、よろしく』


鍛え上げられた逞しい腕は

転んだ私を、ひょい…と

いとも簡単に起こしてくれました





『あ・・・ありがとうございました

た・・・タチバナです・・・

よろしくお願いします』





子どもじゃあるまいし・・・





ボソボソと名乗った私




当時まだ…〃その名前〃を

名乗らなければならなかった私は




やはりそれが嫌でたまりませんでした





いつまでも付きまとう


その名前が


キライでキライで


嫌で嫌でたまりませんでした





出来れば名乗りたくなくて


出来れば呼ばれたくなくて





・・・







『〃まりあちゃん〃か・・・よろしく!』





そんな私の事情なんて・・・私情なんて



相手の知った所でもなければ


もちろん話していません








何を思ってか


初対面の時から


その人だけは私を


そう呼んでくれました








「スグルさん♪」


「スグルくん!」





『・・・』




いつでもみんなに

親しみをこめて、そう呼ばれて

施設内に友人も多くて・・・




そんな人を…私は



みんなと同じように

そうは呼びませんでした





馴れ馴れしいかな・・・なんて
思ったのも勿論ですし



私より・・・6~7歳
歳上らしい、その人




なんて・・・そんなのは


ちょっと都合の良い建前かも知れません






その人に限らず


その人も…対・私に限らず



みんなが気さくに

下の名前で呼び合っていた




どことなく

アットホームで



フランクな雰囲気のリハビリ施設





そんな環境に…逆らうような





空気を読まない…と言うか





新入りな私が


溶け込めるように




親しくしてくれる、その人に




どこかよそよそしく

そう呼んでいたのは





逆に失礼ともとれる


そんな態度を取ってしまっていた




本当の理由は


おそらく、いたって単純なものでした





それは・・・きっと・・・

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