不思議の国のアリス
第2章 ♠︎
「ですから、体調を崩しがちなので欠席しますと言ってるんですけど、何か問題でもあるんですか?」
糸がピンと張ったような意思の強い声で彼女は主張した。
その威圧的な声の調子に少し気後れした女性は、木製のボードを彼女に渡すと急ぎ足で立ち去ってしまった。
何が、今回も飲み会出られないんですか〜?だ!同じ質問何回も繰り返しやがって!この会社の飲み会で酒臭いオッさんに無遠慮なプライベートの質問攻めされてから二度と行かないって決めたんだから行かないわよ!新入社員じゃあるまいし!
......という暴言の数々を呑み込んで、由紀は、暑気払いの内容が書かれたA4用紙に濃い筆圧で欠席という2文字を書いた。
彼女は、普段から他人に威圧的な発言をする方ではない。
確かに物言いはストレートかもしれないが、仕事熱心で対人関係にも人一倍気を使ってる。
今回は、事情を知らない職場の女性職員が飲み会への欠席理由を執拗に聞いてきた為、少々煽るような言い方になってしまっただけなのだ。多分きっと。
長い退社時刻のベルが鳴り始める。
よっこらせと腰を上げると由紀は鞄を手に掲げ、社員に挨拶をし、階段を駆け足で降りていく。
そして1階でお仕事をしている守衛さんにも挨拶して、外へと繋がる自動ドアを通り抜けた。
日没後の暗い空、そして体調を崩しそうな冷たい秋風がびゅうびゅうと吹き付けていた。
現在の気温は11℃。
万全の防寒対策をした通行人が早足で由紀の勤める会社前を過ぎ去っていく。
そりゃあ、誰だって寒い場所に長居するのは嫌だろう。
糸がピンと張ったような意思の強い声で彼女は主張した。
その威圧的な声の調子に少し気後れした女性は、木製のボードを彼女に渡すと急ぎ足で立ち去ってしまった。
何が、今回も飲み会出られないんですか〜?だ!同じ質問何回も繰り返しやがって!この会社の飲み会で酒臭いオッさんに無遠慮なプライベートの質問攻めされてから二度と行かないって決めたんだから行かないわよ!新入社員じゃあるまいし!
......という暴言の数々を呑み込んで、由紀は、暑気払いの内容が書かれたA4用紙に濃い筆圧で欠席という2文字を書いた。
彼女は、普段から他人に威圧的な発言をする方ではない。
確かに物言いはストレートかもしれないが、仕事熱心で対人関係にも人一倍気を使ってる。
今回は、事情を知らない職場の女性職員が飲み会への欠席理由を執拗に聞いてきた為、少々煽るような言い方になってしまっただけなのだ。多分きっと。
長い退社時刻のベルが鳴り始める。
よっこらせと腰を上げると由紀は鞄を手に掲げ、社員に挨拶をし、階段を駆け足で降りていく。
そして1階でお仕事をしている守衛さんにも挨拶して、外へと繋がる自動ドアを通り抜けた。
日没後の暗い空、そして体調を崩しそうな冷たい秋風がびゅうびゅうと吹き付けていた。
現在の気温は11℃。
万全の防寒対策をした通行人が早足で由紀の勤める会社前を過ぎ去っていく。
そりゃあ、誰だって寒い場所に長居するのは嫌だろう。