テキストサイズ

ペンを置いた日

第3章 エピローグ

「いやあ先生、今回の新作は凄かったですね。期待の三作目、ついにアニメ化が決定したわけですけれど、この発想はどこから思い浮かぶのでしょう」

眼鏡を掛けた男はそんな質問をしながら、指先でペンを走らす。

「実はこの話、モデルがいるんですよ」

「ええ!? ...おっと失礼、実は私、前からこのモデルは先生なんではないかと思っていたんですよ、もしかしてですけど...」

「ええ、まあ、その通りです」

男は大きな髭を揺らしながら笑い、そう言う。
今やテレビやドラマの脚本まで手掛ける有名作家による期待の三作目。
世間は盛り上がりを見せているが、当の男はあまり普段とは変わらない。

「それとこの物語のヒロイン、先生のデビュー作の『閃光の雪菜』の雪菜ちゃんそっくりだと思ったのですが、なにか繋がりはあるのでしょうか」

「あはは、いやはや、気づかれてしまっていましたか。これ実は雪菜本人なんですよ。この話の中では名前は出てきませんけれど、見た目や仕草など、ところどころに散りばめたつもりです」

「おっとそうだったんですか、驚きですねえ」

眼鏡の男はペンを走らす。

「この話はもう二十年も前の話でね、今でも鮮明に覚えていますよ」

「ほう、そうなんですか--」


その後、取材は終わり、記者達が部屋から出て行こうとした間際、先の眼鏡の男は突然振り向き、男にこう言った。

「先生に個人的にお聞きしたいことがもう一つあるんですけれど、先生の描くキャラクターが時々、動いているように見えるのですが、あれはなんなのでしょうか」

男は笑って答えた。

「さあ、僕がこうして漫画家として活躍していることに喜んでいてくれていれば良いのですけれど、でも案外、絵の中で遊んでいるんじゃないですかね」

男は、優しい笑みを、浮かべていた。

END
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白いエモアイコン:共感したエモアイコン:なごんだエモアイコン:怖かった

ストーリーメニュー

TOPTOPへ