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イチャコラミックス

第5章 精霊彼女の良い土

アゼット・キャロライン、彼女もかつてエレミムと共に人類を滅ぼそうとしていた。
彼女はこの地球上に存在していた花の精霊で、命を助けられたエレミムに恩義を感じ同行していた。要は彼に付き従っていただけなのだ。
とは言え、人間に対する多少の恨みはあったかもしれないが。

その彼女が土の能力を持つ香田に惹かれたのは必然だった。
「いい土ですわ」
香田を見つめ、何度そう呟いたか。
人語に略せば「いい男ですわ」である。
香田は土と言われ、己の能力の事だとばかり思っていたが、周りの者には愛の囁きにしか聞こえなかった。

そんな彼女が他所の男とデート。
え、俺の事好きなんじゃなかったの?
あぁそうか、あまりにも振り向いてくれないから諦めたのか、そうか。そういう事か。

香田は意気消沈した。

「香田、本当に大丈夫か?」
エレミムが心配そうに肩を摩る。
その様子をニヤニヤ見ている男がいた。
次朗である。
「リョウちゃん、自分の気持ちにやっと気付いた?」
「あぁ、ごめんね、軽率だったよ。」
清和氏が済まなそうに香田に手を合わせる。
「アゼットノリノリだったよ~。」
「やめろ次朗!これ以上香田の心を抉るな!」
エレミムが次朗を睨む。
「香田、ノリノリなんかじゃない!渋々だ。アゼットは付き合いで仕方なく行ったんだ。」
「つき、あい?」
エレミムがコクリ、と頷く。
「人間にはあるんだろう、そういう『付き合いで仕方なく』ってやつが。アイツはこの店の取引先、だから。接待みたいなもんだ。」
エレミムが言葉を探り探り言う。
その様子がいじらしくて、清和は少し感動した。エレミムくん、成長したね…。彼の中の持ち得なかった親心がジワジワきている。
「エレミムの言う通りだよ。アゼットにその気は無い。だから安心してよリョウちゃん。」
言いながら、次朗は香田の向かいの席に座る。
「でも相手は…どうかな。」
「え」

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