愛してるって言って!
第5章 【夜の闇は白い朝を連れてくる】
ある休日の朝。夕べ遅くに降った雪は、朝方止んだ様だった。空は嘘の様に晴れ渡り、眩しい太陽が真っ白な森の中に日を差して照らしている。忍は、いつもの様にやかんを火にかけて、お湯を沸かした。
テーブルの上には、一枚の便せんが置いてある。ベランダの窓を開けると、入り込んでくる風にそれは少しだけ揺れた。
「静矢さん、コーヒー淹れたよ」
「ありがとう」
コーヒーを淹れたマグカップを二つ持って、忍はベランダに出る。手すりにそのひとつをそっと置くと、静矢は忍を見て優しく微笑んだ。
「茜の手紙、読んだよ」
「そうか」
忍は夕べ、茜の手紙を静矢に手渡され、読んでいた。
「さすが茜、と言いたいところだけど、自殺した事はやっぱりおれは肯定したくない。天才とバカは紙一重だって言うけど、あれは嘘だね。紙一重じゃなくてイコールだよ」
「そうかもな」
心なしか力のない静矢の返事に、忍は、少し心配になってその顔を窺った。だが、そんな忍に気付くと、静矢は忍を見て微笑んだ。
「茜は、俺達を怒ってるかな」
「どうかな。静矢さんの事は呆れてるかもね」
「呆れてる?」
コーヒーを少し飲んで、忍は頷いた。
「だって、ちゃんと茜は静矢さんの背中、押してくれたのに」
「本当だな。でも、不思議だ。まるで、こうなる事が茜にはわかってたみたいだったろ?」
「おれも不思議だと思うけど、まぁ、昔から茜はちょっと人っぽくないっていうか…妙に達観してるとこあったからなぁ。単純なおれ達の事なんて、余裕で予想できたのかも」
忍はクスッと笑う。すると、静矢も釣られて笑った。二人が、茜の話でこんな風に笑顔になるのは、初めての事だった。
忍は、空を見上げた。この空のどこかで、茜は見守ってくれているのだろうか、と少し眩しい空を目つめる。
茜、おれ…静矢さんのそばにいてもいいかな?茜の分まで、この人をずっと愛し続ける。おれが、ちゃんと守るって、誓うから。
「ねぇ、静矢さん」
「ん?」
「愛してるって言って」
静矢は、少し驚いたが、すぐにふっと微笑んだ。
「愛してるよ、忍」
忍は、愛おしい静矢の肩に寄り添ってもたれる。そんな忍の頬に、静矢はそっと口付けた。
テーブルの上には、一枚の便せんが置いてある。ベランダの窓を開けると、入り込んでくる風にそれは少しだけ揺れた。
「静矢さん、コーヒー淹れたよ」
「ありがとう」
コーヒーを淹れたマグカップを二つ持って、忍はベランダに出る。手すりにそのひとつをそっと置くと、静矢は忍を見て優しく微笑んだ。
「茜の手紙、読んだよ」
「そうか」
忍は夕べ、茜の手紙を静矢に手渡され、読んでいた。
「さすが茜、と言いたいところだけど、自殺した事はやっぱりおれは肯定したくない。天才とバカは紙一重だって言うけど、あれは嘘だね。紙一重じゃなくてイコールだよ」
「そうかもな」
心なしか力のない静矢の返事に、忍は、少し心配になってその顔を窺った。だが、そんな忍に気付くと、静矢は忍を見て微笑んだ。
「茜は、俺達を怒ってるかな」
「どうかな。静矢さんの事は呆れてるかもね」
「呆れてる?」
コーヒーを少し飲んで、忍は頷いた。
「だって、ちゃんと茜は静矢さんの背中、押してくれたのに」
「本当だな。でも、不思議だ。まるで、こうなる事が茜にはわかってたみたいだったろ?」
「おれも不思議だと思うけど、まぁ、昔から茜はちょっと人っぽくないっていうか…妙に達観してるとこあったからなぁ。単純なおれ達の事なんて、余裕で予想できたのかも」
忍はクスッと笑う。すると、静矢も釣られて笑った。二人が、茜の話でこんな風に笑顔になるのは、初めての事だった。
忍は、空を見上げた。この空のどこかで、茜は見守ってくれているのだろうか、と少し眩しい空を目つめる。
茜、おれ…静矢さんのそばにいてもいいかな?茜の分まで、この人をずっと愛し続ける。おれが、ちゃんと守るって、誓うから。
「ねぇ、静矢さん」
「ん?」
「愛してるって言って」
静矢は、少し驚いたが、すぐにふっと微笑んだ。
「愛してるよ、忍」
忍は、愛おしい静矢の肩に寄り添ってもたれる。そんな忍の頬に、静矢はそっと口付けた。