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愛してるって言って!

第4章 【その愛に中毒を起こす】

『忘れてください』

もしも、これがとある物語だったら、今オレは、どうするべきなんだろうな。
嶋はふと、仕事中そんな事を考えた。
最後にハッピーエンドを迎えるのはあいつか、オレか。まぁ、この感じで行けば間違いなく邪魔なのはオレだ。
忍が静矢に昔から恋愛感情を持っている事は、聞いて既に知っている。だが、静矢の事は、嶋の中で完全にノーマークだった。いくら忍が好きでも、さすがに義理の兄とどうこうなる、なんて事にはならないだろう、と高を括り、油断していた。
いつからなのかはわからないが、決定的に異変を感じ始めたのは、静矢の誕生日の日、たまたま行った店で静矢と忍に会った時だった。静矢は、祝いの席で、愛おしそうに、何かとても大切なものを見るような目で、忍を見つめていた。直感でまずいと思った。いつの間にこいつは、忍をこんな風に見るようになったんだと思ったが、幸い、その事に忍は全く気が付いていない様ではあった。ただ、嶋は焦っていた。だからつい、後先考えずに忍に想いをぶつけてしまった。
当然ではあるが、忍はそれを受け入れてはくれなかった。ここ最近、忍は、千春と嶋が行動を共にしている事を少し気にしているように見えたので、嶋には淡い期待もあったのだが、どうやらそれは都合のいい解釈に過ぎなかったらしい。
そしてその翌日、妙に疲れた静矢と、ため息をついてばかりの忍を見て、やはり自分は報われないのだという事を、悟っていた。

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