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愛してるって言って!

第4章 【その愛に中毒を起こす】

「嶋さん」
「千春、休憩か」
休憩中、千春は時々美術館にやって来る事がある。那須に来たばかりの頃、教科書に載っているような有名な画家の名前も、作品名もほとんどわからなかった千春は、今ではそれらに興味を持ち、日本画をはじめ、絵画に関しては以前に比べてかなり詳しくなっていた。
「あっ、冬だからですか?これ、前にはなかったですよね?」
「あぁ」
千春は、展示されたばかりの絵に目を止めて、そう言った。
「東山魁夷だ。やっぱり綺麗だな。線が細かくて、写真みたい」
「あぁ」
千春がせっかく興味を持ってくれているのに、嶋はそんな返事しかできない。今目の前にいるのは千春なのに、嶋の脳裏には、忍の事ばかりが過った。
「嶋さん…最近元気ないですね。忍さんいる日は特に、お店に来ないし」
少し目を伏せて、千春は言う。
「あいつがいると、今のオレは何を言うかわからないからな」
「それって、忍さんと、蒔田さんの事ですよね」
嶋は少し驚いて千春を見たが、すぐに目線を絵に移した。
「お前は知ってるのか」
「知ってるって言うか、たまたま見ちゃったんです。美術館の駐車場で…二人が車の中でキスしてるとこ」
やっぱり、な。
「蒔田さんからって感じでしたけど、初めてじゃないんじゃないかな…」
「そうか」

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