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異世界転生が出来ると思ったのにポイントが高すぎる

第2章 後編

「これではどうだ」

 銀月様は煙に巻かれる。もやもやした中を目を凝らしてみていると年老いた彼が現れた。

「え、ぎ、銀月様! その姿は……」
「うむ。私の時間を進めたのだ」

 若く麗しい青年の姿から渋いロマンスグレーの中年になっている。

「と、歳をとられても、か、かっこいいんですね」

 こんなカッコイイ男の人初めて見たと思った。きっと若い時に初めて彼に会った時もそう思ったはず。

「今のお前と釣り合うだろう」
「私のために……」

「時を進めると私にも乏しい感情が少しだけ深まった。今になってやっと気づく。お前を好いておる」
「えっ!」

 何を言われたのか全く分からなかった。
『オマエヲスイテオル』この言葉を何度も頭で変換してやっと彼が私を好きだと言ってくれていることに気づく。

嬉しさのあまり血圧が高くなってこのまま倒れてしまいそうだ。若い頃なら鼻血を出しているはず。

「あ、あの」
「お前の願いを叶えるために私は待っていた。ポイントは十分ある全ての願いが叶うだろう」

「す、全て……」

 年老いて深い感情を見せる銀月様がじっと私を見つめる。私、愛されてるの?

「何でも言うがよい。何の特技も持たずに生まれてそれだけの高ポイントを貯めるのは歴史上でも10人はいないだろう」

どうやら普通の人は寿命までになんとか8万ポイント貯めて、天国と呼ばれる異世界に旅立つそうだ。

「私の願い……」

 蘇る若かりし頃の願い。銀月様の子供を産んで育てたい。らぶえっちの証を残したい。

「でも、私がいなくなると……」
「案ずるな。お前が行った功績は残り、お前の代わりがちゃんといる。もう今の世界が良いのならばこの世での願望をかなえてやろう」

「いいえ、いいえ。私はあなたに愛されたいと、愛されることが無理なら何か残るものが欲しかった。願いは若い頃と同じです」

 やっぱり気持ちは変わらない。環境の変化と時間で想いが薄れてはいたけれど。

「では叶えよう」

 目の前がぱっと白く眩しい光に覆われ私はぎゅっと目を閉じた。

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