テキストサイズ

異世界転生が出来ると思ったのにポイントが高すぎる

第2章 後編

 お札を一枚と45円を賽銭箱に投げ入れ柏手を打った。薄暗い神社にぱっと眩しい光が放たれる。

「ぎゃっ! な、何かしら!?」

 驚いてきょろきょろすると目の前に銀月様が現れた。

「ま、まさか……」
「久しいな。ポイントの交換に参ったのか」

 以前の麗しい姿のまま銀月様は静かに佇み私の目を見つめる。

「いえ……もう、おばさんになりましたし。若い頃のような願望は――もう、消えてしまいました」

 初めて彼と会い、身体を重ね愛されたいと願ってから30年経っている。私はすっかり年老いて肌はたるみ、かさつき、シワも深い。

「銀月様は変わらないですね」
「お前たちと時間の過ぎ方が違う故、変化がないように見えるのかもしれないな」

「久しぶりにお目にかかってなんだか元気が出てきました。気持ちが若返った気がします」
「もう何も願望はないのか」

「願望――ですか……」

 何の恐れもなく反省することも後悔もしなかった頃を、瑞々しい若かった頃の自分を思い出す。あの頃は異世界へ転生し麗しい貴公子に溺愛されたいと単純にロマンチックなことを考えていた。そのあと銀月様に会い、心から愛され、叶わねば彼の子供が欲しいと願いここまできた。

「もっと若ければあなたにまた愛されたいと願うのかもしれませんね」

 ふっと笑んで銀月様は「今のままで愛されたくないのか」と問いかける。
私はほのかに湧き上がる温かい感情を優しく受け止めるが以前の劣情にはならなかった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ