BLUE MOON
第6章 星空
「あっ…」
モモが連れ出されたということは
「どうも…」
こういうことになりますよね。
一人で部屋に居てもなんなので仲良し姉妹にならって大浴場へと向かった。
浴場の扉を開けるとまだ時間的に早いからなのか人は少ない。
軽く汗を流して宿自慢の露天風呂に向かうと
「桜木さん…」
青木さんが先に湯に身を沈めていた。
空は夏特有の高くて蒼く山々の緑は目に優しい。
「ふぅ…」
日頃の疲れを癒すには充分すぎた。
「杏子がスミマセン」
それは目を閉じたときだった。
青木さんは申し訳なさそうに笑った。
「いえいえ 仲がいいんですね」
「久しぶりですからね」
見るからに人の良さそうな彼は姉妹をずっと見守っていてくれたのだろう。
空を見上げながらニコリと笑った。
俺も同じように空を見上げ真っ青な空に張り出した雲が形を変えていく様を眺めた。
「桜木さんは昔スポーツされていたんですか?」
「えぇ、水泳を」
「どうりで…スレンダーの割りに肩幅が広いと思いましたよ」
「いや、もう大分ダラシナイ体になりました」
こんなときは他愛もない会話がちょうどいい。
「それを言われたら俺なんか…」
腹を摘まみながらまた彼は笑った。
「失礼ですが青木さんはおいくつですか?」
「今年36になります」
「私もです。アラフォーの仲間入りですね」
他愛もない会話からグッと近づく瞬間は仕事でもプライベートでもあるものだ。
「それじゃあ安心だ」
「はぃ?」
青木さんはうんうんと頷くと湯船の中で座り直し
「桃子ちゃんをよろしくお願いいたします」
頭を下げた。
「いや、こちらこそ…大事な妹さんを…」
俺も急かさず座り直し頭を下げる。
大自然のなかで男二人、湯に浸かりながら何をしてるのやら。
「それは杏子に言ってやってください。アイツ今日は桃子ちゃんに相応しい人かどうか見極めてやるって張り切ってますから」
「それは…参ったな」
大切にしたい女を自分のものにするにはどんなときでも一筋縄じゃいかないらしい。
「私も陰ながら応援させてもらいますから」
「陰でですか?」
「杏子に頭が上がらないもので」
青木さんは桃子のお眼鏡に叶ったんだ。
ならば俺も…
「私も桃子には頭が上がりません」
嘘偽りのない自分を見てもらおう。