BLUE MOON
第6章 星空
「キヤハハッ!」
美味しい料理を目の前にして
「もう桃子ったら」
美味しいお酒を堪能して
「だってお姉ちゃんがぁ、キヤハハッ」
気を許せる人たちに囲まれれば自然とこうなるのかな
桃子は頬を桃色に染めながら楽しそうに笑っていた。
「涼さんもそう思いません?」
「そうだね」
桃子から結婚を前提にお付き合いしてる人がいるって聞いたときは正直驚いた。
だって去年の夏一人で仙台にきたときの桃子は私は幸せになっちゃいけないんだって笑ったから。
姉の私がどんなに言葉を並べてもあの日の桃子は首を縦に振ることはなかった。
あれからどんな心の変化があったのかと今日までずっと考えてた。
でも答えは早く見つかった。
桜木さんの隣に立つ桃子を見た瞬間にモヤモヤしていた何かが心にストンと落ちた気がした。
「桜木さん、あんまり桃子を甘やかさないでください」
「スミマセン…この笑顔をみるとつい」
桜木さんの隣で柔らかく微笑みながら頬を染める桃子はどこからどう見ても幸せそうで
「桜木さん、俺も桃子ちゃんを甘やかしちゃう気持ち分かる気がします」
「ですよね!」
「智也まで!」
「「アハハハっ!」」
でも、久しぶりに二人でお風呂に浸かりながら聞いた話は姉としてやっぱり引っ掛かる。
だって桜木さんは大きな会社の御曹司。
現実を考えるとそれなりの身分というか環境で育った女性の方が相応しいんじゃないかって考えるのはごく自然なことだと思う。
父と母が不慮の事故に遭ってから私たちは貧乏ながらにも二人肩を並べて生きてきた。
桃子が一人で生きていくためにと進学した大学の奨学金だって返し終わるのは当分先。
「ふぁ~っ」
大きなあくびをする一般庶民が嫁いで
「眠くなったか」
「うん、少し」
嫁として勤まるのだろうか。
「じゃ、ここにおいで」
「でも…」
「俺たちもう少し飲みたいから」
酔った桃子は桜木さんの膝に頬を埋めて目を閉じた。
桃子がずっと笑っていられるように
「もう桃子ったら」
その笑顔を私たちもずっと見ていられるようにきちんと桜木さんと話さなきゃならない。
「昨日は緊張して寝られなかったみたいなんで」
桜木さんは目を細めて桃子の髪を優しく撫でる。
さて、姉としての思いの丈をぶつけてみようじゃないか。