BLUE MOON
第6章 星空
涼さんは帯だけ解くと私を軽々と抱き上げ露天風呂へと歩みはじめた。
何も言わずに彼の首にしがみつく私は緊張して涼さんの顔も見れない。
「先に入っててください」
籠が2つ置いてある簡易的な脱衣所で降ろされると彼に背を向けて先に入るように促した。
襟に手を掛け深呼吸を繰り返す。
もうすべてを知り尽くされて恥ずかしがることなんてないのに…
涼さんが湯船に浸かった音が耳に届くと胸の鼓動はさらに大きく鳴り響いた。
…落ち着けアタシ
私は心を決めるとゆっくり息を吐いて浴衣に手を掛け、宿の家紋が入った手拭いで体を隠し背を向けてる涼さんの元へ歩んだ。
*
掛け湯をする音が終わると淡いピンク色をのせた小振りの爪先が湯船にゆっくりと入る。
俺に背を向け小さく蹲るモモの肩を抱き寄せて
「もっとこっち」
いつものように俺の脚の間に座らせた。
耳も首も真っ赤に染まったモモの体は無数の星に照らされて滴が宝石のように輝く。
「月が見えないな」
「昨日新月でしたから」
モモの腹に手を回し星が煌めく空を見上げる。
「だからか、星がこんなに見えるのは」
「天然のプラネタリウムですね」
モモは少し落ち着いたのだろうか、気付けば俺の胸に凭れて俺と同じように星空を眺めていた。
湯が流れ落ちる音と樹々が風に靡く音
「流れ星見えるかな」
「見たことない?」
「涼さんはあるんですか?」
そして心地よい柔肌と愛らしい声
「あぁ、子供の頃ね」
幼少の頃から訪れている宿だが、こんなに贅沢な気持ちになったのは初めてかもしれない。
「その時お願い事はしましたか?」
「どうだったかな、忘れちゃったよ」
湯を弾くモモの肩に唇を落としながら答える。
「流れ星見れたらモモは何てお願いする?」
「そうですね…もぅ涼さん」
食むように肩にいくつものキスを落とすとモモは擽ったそうに捩り俺を睨み付ける。
…チュッ
その顔が可愛くて尖らせた唇にキスをすると
「涼さんと幸せになれますように…ってお願いしようかな」
視線を外し恥ずかしそうに答えてくれた。
たった一杯のコーヒーがもたらしてくれた縁
「風呂で襲うつもりなかったんだけどなぁ」
「え、ちょっ、何!」
ザバーンっ
「キャッ!」
「ほら大きい声出さないの」
俺も流れ星を見たらキミを一生離さないと誓うよ