
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第1章 壱
極々普通の、高校生だった。
いや…
どうだろう。
違うか…
暗くて極度の人見知り…だな。
それでも僕は生きて来られた。
両親はちゃんと、"一応"居る。
母親は優しくて普通のどこにでも居る様な母さん。
父親は…
最低な、男。
毎日毎日スーパーで働く母さんはパートとは言ってももう何年も働いてるから、ベテランで。
店長さんもとても良くしてくれてるっていつも楽しそうに笑ってる。
父さんは、本当に最低で。
働きもせず毎日パチンコへ行っては帰って来て酒を飲む。
お金が無くなると母さんからせびってはまた、パチンコへ。
僕はそんな父親が大嫌いだった。
血の繋がった肉親だと言う事を断ち切ってしまいたいくらい、大っ嫌い。
一生懸命働いてる母さんに、手を上げるから。
小さい頃は普通の両親だったんだ。
父さんだってちゃんと真面目に働いてもいた。
きっかけは多分、会社の倒産だと思う。
勤めていた会社が、ある日突然倒産した。
中学に入って間もなくだったと記憶してる。
原因はよく分からないけど…
父さんもその事に絡んでるらしいって聞いた。
それからだ。
父さんが昼夜問わず酒を飲み出したのは。
元々、母さんはパートで働いてはいたんだ。
家計の為じゃなかったそれが、その日を境に母さんの収入が唯一の収入源に変わり。
生活が一変した。
初めて父さんが母さんに手を上げたのは、僕が中学を卒業する間際で。
怖くて仕方なかった。
大人しい性格の母さんが、そんな父さんに逆らえるはずもなく、要求される度にお金を差し出す。
パチンコで勝つととてつもなくご機嫌で帰って来ては僕たちを外食に連れ出して。
帰って来ると、僕が居ようと構わず母さんを抱く。
『和也が居るから』って母さんの言葉なんて聞きもしない。
部屋で一人、耳を塞いで耐えるしかなかった。
『和……ここから、逃げよう…』って、初めて母さんが僕の前で涙を流した。
高校生になって初めて、母さんの涙を見た。
ボロボロのアパートに、母さんと二人で逃げてきた僕たちは見つからない様にって必死だった。
スーパーの店長にも事情を話し、レジや店内での仕事から奥での仕事に変えてもらった母さん。
僕は高校に通いながらも通学時間に見つからない様にとなるべく人混みに紛れた。
卒業したら、働いて母さんを少しでも楽にしてあげよう。
