
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第1章 壱
「……僕は…大事な…母さんを、見捨て、た……最低、なんです…」
ずっと…
静かに聞いていた、相葉さん。
俯いてる僕には分からないけど、多分今、彼は青褪めた顔をしてる。
相葉「和…くん、が……自分を責める事、ないじゃん。だって!」
「僕は。…18だったんです。…いくらでも、助けようと思えば、出来た。それをせず、僕は逃げた……体を張って救う事は出来たはずなのに…僕は一生…この、事実を背負、って…生きて、いかなきゃ、ならない…」
彼の顔なんて見れなかった。
顔も上げられず、拳と腿が涙で濡れていく。
多分は彼は優しいから、"僕の所為じゃない"と言ってくれようとしたんだろう。
僕だって…
そう思おうと思った事もあった。
あのままあそこに居たら、僕も今頃ここに居ないと思うと、あれで良かったんだと。
だって、母さんは『逃げて!』と叫んだんだから。
「……僕の、耳…には、まだ、母さんの…声が…こびり、付いてます……いつでも…僕は……そうやって、逃げて、ばかり…来た、んです…」
あれで良かったんだと思った次の瞬間には、母さんの声が耳の奥で叫び続ける。
頭の中で何度も何度も『ごめんなさい』と繰り返すんだ。
僕はきっと、一生許されない。
見捨てて逃げた事から、僕はどう足掻いても逃れる事は出来ないんだ。
そんな涙を流し続ける僕の全身が、ふわりと温もりに包まれた。
相葉「…話してくれて…ありがとう。ごめんね?俺、頭良くないから、掛ける言葉が見つかんない。でも。俺はここに居るから。和くんの傍にずっと居たい」
「…ッッッ!!」
相葉「辛かったね?泣いていいよ?傍に居るから。……俺は、何があっても和くんがどんなでも……ずっと、居るから」
この人は、何処まで人がいいんだろう。
返す言葉が出てこない。
出てくるのは嗚咽ばかりで。
僕は久し振りに、声を上げて泣いた。
まるで子供の様に、泣きじゃくり。
それでも相葉さんは、ずっと抱き締めながら背中を擦り続けてくれていた。
「……僕には…何にも、ない、んです…友人も、居ませんでした……でも、貴方に、出会って…三人の、友人が出来、ました…こんな僕に…初めて…大切だと、思える人が、出来て…」
相葉「うん」
「…こんな、僕、なのに……それでも…傍に、居て、くれるんです、か?」
泣き過ぎて言葉がまともに出てこない。
