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貴方がいつもそこに居てくれたから…

第3章 ※ SS ※

【 智 】

"ただいま♪"って聞こえて、翔が帰って来たんだと気付く。
だけどいつもならカウンターまで来てからそう言うのに、今日は珍しく店先で言われた。
不思議に思いながらも、すぐに誰か連れてきたんだと思い直し店先に向かう。

「お帰り」

そう言うと、ニコニコしてる翔の後ろ。

俺は目を見開いた。

ニノが居るのは確認してる。
だけど、その隣に…

「……りょ、ぅ?」

成瀬「………さと…し?」

成瀬 領が居た。

記憶のない程小さい頃から施設で過ごした俺。
その施設で、一緒に育った領。
俺が年末とか思い付いた時に顔を出しても滅多に会う事がなかった彼が、今目の前に居る。

領もまた、俺と同じ様に驚き目を見開いてた。


店に入れてカウンターに座る三人に、酒を出す俺。

成瀬「…マジで、何年振りだ?」

「覚えてねぇよ(笑)…そのくらい会ってねぇだろ」

櫻井「いや、俺さ。…成瀬さんが幼少期に施設で過ごしたって話してくれたじゃないですか」

そう言って、翔はなかなかタイミングがなかったからと笑う。
同じ施設かどうかなんて、翔に分かる訳ないのに。
この都会に施設なんてたくさんあるんだから。

違ったら違ったでまぁそれは別に初めましてで終わらせようと思ってたと、翔は尚も笑った。


結局、懐かしい話に翔の機嫌を損ねてしまった。


領とニノが帰った後、部屋で不貞腐れ気味にベッドの中に潜り込む翔を見て、思わず笑みが溢れてしまう。

「………翔?」

櫻井「………」

「ふふ(笑)…顔、見せろよ」

櫻井「………やだ」

「ははは(笑)…じゃあしょうがない。…布団敷くか…」

顔を見せないなら、俺はベッドの下に寝るよ。

そう言った俺の動く気配を感じたらしい翔が、勢い良く布団を剥いで俺に視線を向ける。
その顔は久し振りに見る、情けない表情で。

ベッドの隅に腰を下ろし翔の頬に手を添えた。

「………昔の話だろ?」

櫻井「………うん」

「今はもう、翔以外に興味ねぇから」

櫻井「…分かってる。…大丈夫……ごめん」

ほら。
全然大丈夫な顔してない(笑)

そっとキスをしてやると、翔が何とも複雑そうな苦笑いを浮かべた。

櫻井「好き、なんだよ。………あぁ言う話、駄目だ…俺。ムカついて、どうしようもなくなる」

「…うん」

そう言って翔は俺の後頭部を押さえ込みキスをした。

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