
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第3章 ※ SS ※
成瀬「…智は毎年顔出してんだって?」
「あー………まぁ、出してた。…最近は行ってねぇ(笑)」
成瀬「…何で?…彼が居るから?」
「まぁ、そんなとこ(笑)…でも年賀状は送ってる。心配掛けたりとか、これ以上はなぁ(笑)」
『…行けばいいだろ?彼も知ってるなら』って言われて、あの件があるから行けないんだとは口が避けても言えないから、曖昧に笑っておいた。
俺より一つ上の領。
一つとは言え、先輩でもあるのにかなり生意気だった。
それでも領は俺を見捨てる事なく、いつも真剣に説教したり諭そうとしてくれてた。
当時は本当にウザくて仕方ないとしか思えなかったけど、今なら感謝出来る様になってる。
成瀬「…高校生のくせに、飲み歩いてるとかよ。女遊びしてるとか。…マジで今じゃ考えらんねぇ生活だったもんな?」
「確かに。あの頃はマジで領とか先生とかウザくてウザくて(笑)……でもまぁ、今なら本当マジですいませんでしたって思いしかねぇよ」
苦笑いする俺に、領は『…更正したならいいだろ、もう』って優しく笑った。
兄貴でもあり、友人でもあり、戦友みたいな…
そんな存在だった。
俺の周りには当時似た様な輩が集まって来てたけど、常に俺は一人だった。
高校卒業する辺りから落ち着いた理由は自分でも分かってない。
その後施設の皆と一緒に居る事も増えて、領が出ていった後は下の子が常に傍に居た気がする。
「領はいつも"兄ちゃん兄ちゃん"って言われてたもんな?」
成瀬「…あー…確かに。下には人気あったな(笑)」
先生はもう定年してるけど、元気だろうか。
年賀状が届くから元気なんだろうとは思うけど。
そんな懐かしい話をしてると、俺の携帯が音を立てた。
「……はい、翔?どした?」
櫻井『いや、たいした用はないんだけど…』
「…?…そう?」
櫻井『……ハァ…ごめん、智』
「…何が?」
櫻井『……今日って、店…開ける?』
「いや。……開けない(笑)」
櫻井『……そっ、か…』
「ふふ(笑)…早く帰って来い♪待ってっから♪」
どうやら翔は、珍しく夕べの事をまだ引き摺ってるらしい。
『一時間で帰る』とだけ言って切れた電話。
俺は目の前の領に帰れと笑う。
朝まで、付き合ってやるよ。
翔の気の済むまで♪
END
