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貴方がいつもそこに居てくれたから…

第5章 ※ SS ※ partⅡ


新たなプロジェクトを企画課が立ち上げようと必死になってる今、俺は次々と上がって来る企画案に目を通しては手を加えて企画課へ返す…を繰り返していた。

幾度となく繰り返される会議。

何度となく吐き出す俺のダメ出し。

その度に彼らは躍起になって新たな企画案を作り上げて持ってくる。
何日も何週間も、そんな事を繰り返し続け。

彼らは当然、毎日の様に残業の日々。
もちろんそれに伴って、俺も同じ様に帰りは遅くなる。

帰れそうにないと、智に電話を掛けていたのは初めの一週間ほど。
いや…一週間もなかったかもしれない。
それでもメールを入れて、分かったとか飯は食えなんて返事をちゃんと返してくれていたのに…

俺の全てを、智は分かってくれているはずだと、俺は完全に傲り甘えていたんだ。


何とか新プロジェクトも初期段階まで漕ぎ着けられて、やっと帰ってゆっくり出来るはずだったのに。

新たに契約を結んだ企業からとんでもない話が舞い込んできた。
しかもそれは俺の判断を聞かず、企画課長が独断と偏見で返事を相手に返してしまった事により、俺だけじゃなく雅紀まで巻き込む羽目に。
結果、二宮さんをも傷付けてしまった。


智に責められても、返す言葉なんかない。

それでも必死で謝り雅紀と二宮さんにも頭を下げる事が出来て一件落着したはずだった。

…のに。

智の中には連絡をしなかった事が、未だに引っ掛かりこびり付いていたらしい。


久し振りに午後から帰宅出来た俺。
一見いつも通りに見える智だったけど、何となく元気がない気がしていた。

二宮さんが店に来る事が増えたのは智から聞いてはいた。
だから特にこの日も突然顔を出した事に特段驚きもしなかったんだ。


久し振りに言い合いをした気がする。

軽く睨み合う様な事になってしまって、二宮さんに申し訳ない事をした。



部屋に戻ると、智は隅の方に膝を抱えて座ってる。

「智?」

大野「………」

「ごめんな?」

目の前に屈み込み、頭を撫でた。
小さく首を振っただけの智を、そっと抱き締めてみる。

「駄目だよなぁ…甘え過ぎだよな?俺」

大野「………」

「言わなきゃ分かんないって、分かってたはずなのに。最低だよな、ごめん」

大野「……もう…いいって」

顔を上げてくれた智は、きっと自分を責めてる。
眉を垂らして、情けない顔だった。

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