
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第6章 四
スーパーの品出しをする僕の傍で、パートのおばちゃんが楽しそうに世間話をする。
前まではそれもちょっと苦手だった。
だけど今じゃクスッと笑う僕が居て。
おばちゃんはまるで母親の様に優しく微笑んでくれる。
それもこれも、相葉さんのお陰かもしれない。
少しずつだけど、周りの人をちゃんと見れる様になったし、そもそも疑う事をしなくなった。
そんな些細な事を幸せだと密かに噛み締めながら、今日もバイトに勤しむ。
休憩まで後少しって時。
ポケットに入れてた携帯が震えてる事に気付いた。
「ちょっと、すいません。…奥に下がります」
おばちゃんに声を掛けて急いでバックヤードに戻る。
携帯を取り出すと、成瀬さんの名前が表示されてた。
「はい、二宮です」
成瀬『…二宮さん?…成瀬です。今電話、大丈夫ですか?』
「えっと…少しなら。バイト中なので」
成瀬『…そうですか。…ではとりあえず結果だけ伝えます。……ご依頼の件ですが、つい先程全て片付きました。もう二宮さんが過剰なアルバイトをする必要はありません』
「本当、ですか?」
成瀬『…はい。詳しいお話はお会いしてからになりますけど。結果だけでもと思いまして。…すいません、バイト中のお忙しい時間に』
「いえ、とんでもありません。ありがとうございました」
成瀬さんは後日、都合の良い日を教えて欲しいと言う。
詳しい説明をしたいのと、費用なんかの話もしたいとの事だった。
僕は平静を装い了承して電話を切ったけど…
物凄くドキドキしていた。
高額な費用を請求されたら、どうしよう。
僕のバイト代で、支払えるんだろうか。
もし一括でと言われたら?
そんな恐怖にも似た不安が押し寄せて、休憩後のバイトもまるで手に付かず店長に怒られてしまった。
パートのおばちゃんが心配してくれてたけど、それすらも曖昧に笑うしかなくて。
『二宮くん?…大丈夫かい?何かあるなら聞くよ?』
「……すいません、大丈夫です。…ありがとうございます」
バイトを終えて着替えてる僕にそう言ってくれたおばちゃんに、頭を下げて頑張って笑ってみた。
尚更心配そうな顔をされてしまった。
マンションに帰っても、夕飯なんて作れそうになくて。
僕は仕事中だろうと思いながらも相葉さんにお弁当を買って来てほしいとメールを送る。
大野さんの店に行こうって返事が来た。
