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貴方がいつもそこに居てくれたから…

第8章 ※ SS ※ partⅢ


慰安旅行から土産を手に帰って来た翔。
どれもこれも酒ばかりで、思わず笑ってしまった。

『好きじゃない物貰ったって嬉しくないだろう?』

そう言って笑う。
確かに。
置物なんか貰ったって嬉しくはない。
キーホルダーやストラップを貰っても、記念にはなるけど…
実際はどっかにしまい込んで終わりだろう。

「ありがと。……っつうか、翔。具合悪くねぇか?」

櫻井「んー?…俺?……いや、特に」

帰って来た翔の顔色が何となくいつもより悪い気がする。
聞いてはみたけど本人は不思議そうで。
気にならないと言う。

俺の座る隣をポンポン叩いて座れと促した。

素直に座った翔の額に、自分のを当ててみる。

「………やっぱ、ちょっと熱いと思う。…マジで何でもない?」

櫻井「んー………別に気になんないけど?」

やっぱり首を傾げられた。
それでも万が一って事もあるから、体温計を探し出して翔に手渡した。
大人しく俺の言う事を聞く翔は、かなり前に言った俺の言葉をきっと覚えてるんだと思う。

『無茶してる事に気付かないで、無茶するな。…素直に疲れたって言え。大丈夫じゃないのに大丈夫って言うな』

ちゃんと俺の気持ちにケリが付いて、翔に想いを告げて間もなく、俺はそう言った。
社長って肩書きを背負って少ししてから、また同じ様に言ってやってからは翔も素直に疲れたって言う様になってくれたけど…

体調が悪い時は、酷くなってから気付くから質が悪い。

スッと差し出された体温計を確認したら…

「…37度7分…」

櫻井「え?マジで?」

気付いて良かった。
本当にこいつは、自分の事となるととことん鈍い。
思わず出た溜め息に、翔が苦笑いした。

飲みたそうに土産に買ってきた酒の瓶を眺めてる翔に、『やめとけ(笑)』って言いながら風邪薬を渡す。

櫻井「………マジで、言ってる?」

「あぁ、結構マジで言ってる(笑)」

ガックリと肩を落とした翔。
声を上げて笑ってポンポン頭を撫でた。

櫻井「とりあえずさ。…薬は飲むけど、汗掻こうかな♪……そしたら治るかもしんないじゃん♪」

ニヤリ笑うこの男。

…ったく。
今はまだ微熱程度だから良い様なもんだけど…

そう思ったから軽く睨んでみたけど、こいつには何の効果もなく。
グッと腕を掴まれ引き寄せられる。

俺の意見なんか、聞く余地もないらしい。

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