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I'm In Love With The HERO

第3章 笑顔のゲンキ【銀黄】





映士がサージェスのサロンに着くと仲間たちはいなかった。
それぞれ自分の任務でもこなしてるんだろうと懐から野菜を取り出し一眠りしでもしようとしたところ人影が見えた。

「誰かいんのか?」

人っ子1人いない方がおかしいので驚きはしなかったが一応。しかし呼びかけても返事がなかった。
一瞬、侵入者かと考えたがその考えはすぐに打ち砕かれた。

「菜月」

黄色いジャケットに高く結われた2つの髪の毛。中央にあるテーブルの椅子に座っていた。
いつもニコニコと明るく映士を見ればよりいっそう顔を綻ばせ「あ!映ちゃんだぁ!」とちょこちょこと駆け寄ってくる。
その行為を鬱陶しいなんて思ったことなどない。逆に微笑ましいな、と思っていた。
たが、今日は後ろ姿しか見えなくて顔は確認出来なかったが結われた髪の毛が心做しかしょげているように見えた。
何かおかしい。

「…菜月?」

不審に思った映士は再度名を呼ぶ。
菜月はようやくゆっくりと振り返った。

「あ、映ちゃん…」

映士は唖然とした。いつもの弾けるような声と顔じゃない。
うつむき加減で目は伏せがち。明らかに元気がなく、落ち込んでいるように見えた。

「…何か嫌なことでもあったのか」

映士は人を慰めるような行為は苦手だ。だが、あまりにもいつもと様子が違いすぎて声を掛けざるおえなかった。
それが合図かのように菜月はぐぅ、と喉を鳴らすと堰を切ったようにポロポロと涙を流し始めた。



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