
I'm In Love With The HERO
第5章 Better Than Revenge【赤黄←桃】
「チーフ。」
私は恋愛はとても苦手だ。やり方が分からない。
だから駆け引きとか絶対に出来ない。
でも私なりの制裁はさせてもらいます。
「どうした、さくら。」
「この件についてなのですか…」
私はチーフに資料を見せる。チーフも真剣な顔でそれを見る。
今だけは私を心に留めてくれる。
こんな話、菜月はチーフと出来ないでしょうね。
ちょっとだけ優越感。
そのとき、足音がした。少し弾むような音。笑いそうになるのを必死で抑える。
もう仲間の足音なんて分かりきっている。
資料とにらめっこしているチーフを横目にチラリと足音の方を見る。
菜月だ。
菜月はこっちに気が付くと立ち止まりじっと見つめる。
私の視線には気が付いていないようだほっとする。
普段は見せない睨むような目をする菜月に私は少し驚いた。
嫉妬でもしているんだろうか。そう考えるだけで優越感は増していく。
だから私は。
「こちらについてはどうでしょうか?」
「…うむ。」
一歩、チーフに近づく。菜月が眉間に皺を寄せる。滅多に見ることは出来ないであろう菜月の表情。
なので私は振り向いた。まさか振り向くとは思わなかったのだろう。菜月はびっくりした顔。
そして私はニッコリ笑った。
「!」
菜月が目を剥く。そして怒った表情になったかと思うと勢いよくこちらに向かってきた。
「チーフ!!」
「おお、菜月。どうし…うぉ、引っ張るな!!」
「チーフ、行こう!さくらさんから離れて!」
「な、何でだ!?おい、菜月怒ってるのか!?」
「知らない!!」
半ば引きずるようにチーフを連れ去っていった菜月。
私はフッと鼻で笑った。
私の宣戦布告、受け取ってもらえたんですかね。
菜月は私を見くびりすぎです。だって…
「私…意外と復讐が得意なんですよ。」
