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ヴァンパイアのCrazy Night

第2章 彷徨える客人

「ネエ、アタシ……キレイ?」

と、思ったはずだった。

その声を耳にした途端、ピタッと体の動きが止まった。

恐る恐る顔を上げると、大きく口が裂けた女の顔が、至近にあった。目が合うと、なんとも不気味にニヤリと哂った。

「……」

多少は驚いたが、怖くはなかった。

「うん。綺麗だよ」

女の濁った目が、大きくなる。

「ごめんな。今ちょっと、訳あって急いでるんだ。そこ、退いてもらえないかな」

今こうしているうちにも、ゾンビはよじ登って私を襲おうとしている。急がなければ…。

「…ドウシテ、怖ガラナイ?アタシ、醜イ、デショウ?」

「醜くないよ。私、貴女は綺麗だと思う」

「ウソハ、嫌イ…」

「嘘じゃないよ。今こうして間近で見れば、貴女は綺麗な顔してるよ。確かに、最初は怖くて逃げてしまったけど、もう、貴女は怖くない」

私は、女の大きな目を見て微笑んだ。

「貴女は、綺麗だよ」

その瞬間、突然足を引っ張られ、穴底へと引きずり込まれる。

手を差し伸ばすが、それは虚しく空を切った。

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