テキストサイズ

ある深夜の来店客

第1章 ある深夜の来店客

「いらっしゃいませー」


 次の日の午前2時、彼は変わりなく来店する。そしていつもと同じ定食を注文する。
 言葉は交わしてないけど、俺は勝手に彼を信用していた。


 その日の俺は少し腹の調子が悪く、いつもは客がいない時を見計らってトイレに行くのだが、そこまで待てなかった。彼が常連客ということもあって安心してしまったんだ。
 俺は料理を彼に届けるとすぐにトイレに駆け込んだ。スッキリして戻ると、彼はすでにレジの前にいた。
 受け皿には定食代が置かれていた。


「ありがとうございました!」


 俺は変わらず笑顔で見送るのだけど、彼の表情は暗かった。なんとなく気になったけど、食器を片付けにいった。


「あれ……」


 いつも全部綺麗に食べてるのに、今日は半分以上残している。それに水が大量にこぼれていた。


「具合悪いのかな……」


 俺は彼の表情を思い出しながら食器を片付けた。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ