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ある深夜の来店客

第1章 ある深夜の来店客

 携帯の着信音がしつこく鳴り響く。
 俺は眠い目をこすりながら不機嫌に電話に出た。


『山内くん、すぐに来て!』


 梅屋の店長の怒鳴り声。
 現在の時刻は午前8時。
 帰宅したのは午前6時頃。


「マジか…今日もバイトなのに」


 俺は不機嫌に家を出た。
 梅屋に着くとパトカーが停まっていた。
 何事かと入っていくと、事務所に連れて行かれた。


「この男、知ってる!?」


 俺は目を疑った。
 一台のモニターに映っていたのは、レジのお金を盗む彼の姿だった。ちょうど俺がトイレに駆け込んだ時、盗みを実行したのだ。
 定食が半分以上残っていたのは体調が悪かったからじゃない、水がこぼれてたのは慌てて立ち上がったからだ。


 俺は愕然とした。
 裏切られた、と思った。
 彼はそんなことをする人間じゃないと信じていたのに…。
 いや、言葉を交わしたことはない。俺が勝手に信じていたんだ。


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