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僕ら× 1st.

第5章 伊織の婚約者 --Shu

「そうです。アル先パイのご親戚なんですよね?」

親戚というか…苗字こそ異なるが、弟……。

「……花野ちゃんって、伊織の彼女なの?」

認めたくない現実がちらつき始めた俺の喉は、カラカラと乾いてきた。
声がかすれないように唾を飲みこむ。

初恋に浮かれているアルの顔、フィアンセがいると頬を染める伊織……花野ちゃんの首に見た白い光を思いだす。

「つきあってはないようですけど、仲良いですよ?」

彼女は、アルの恋の終局を知っているかのように、悲しげな表情をした。

これは、信じていい話か……?

もしもウソだとしたら…憧れるアルに花野ちゃんをあきらめさせるのが目的。
けど、対抗馬は親戚(弟)の伊織……ウソにしてもすぐにバレてしまい、アルに嫌われ逆効果だ。

伊織も、まだ彼女とはつきあえないと言っていた。

……これは、真実だ。

「ここでも一緒に演奏していますし。2人でジャズかなにかの同好会作ったみたいです」

と音楽室を指さす。

「え?演奏?」

ご存じなかったんですか?と彼女は続ける。

「花野がピアノを弾いて、速水はドラムを…」

「うん。知らなかった。……そうか。教えてくれてありがとう。えっと、名前は?」

「小津茉琴です」

「マコちゃん、どうもありがとう」

俺が手のひらを振ると、マコちゃんは頭をさげて、体育館の方向へ走っていった。

できれば聞きたくなかった。
けど、先に聞くことができてよかった……。

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